インド太平洋研究会 Indo-Pacific Studies

現代版IPR インド太平洋研究会へようこそ

『日本は誰と戦ったのか』とインド太平洋研究会

 インド太平洋研究会第1回オフライン研究会がいよいよ来週に迫ってまいりました。

 参加受付は3月20日(火)でいったん締め切らせていただきますので、ご都合つきましたら、お早めにお申し込みください。

 ☆参加要領はこちら

 

 今回は、発表者である山内智恵子さんがたずさわった書籍『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズワニブックス PLUS新書)と、インド太平洋研究会、第1回オフライン研究会のテーマとのかかわりについて、少しご紹介してみたいと思います。

 

 山内さんは、平成28年に出された江崎道朗先生の『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)以降、『日本は誰と戦ったのか』、『日本占領と「敗戦革命」の危機』(PHP新書)、加えて3月15日発売の最新刊『天皇家百五十年の戦い』(ビジネス社)で江崎先生の右腕としてご活躍されています。

 

 ご存知の方も多いと思いますが、『日本は誰と戦ったのか』は、昨年第1回アパ日本再興大賞を受賞しました。先だって発表された『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』では、日本が日米開戦に向かっていく中で、日本がどのような工作を受け、国内でどのような動きがあったのかが述べられていたのに対し、『日本は誰と戦ったのか』では、日本に対して工作を仕掛けていたアメリカで行われた「(アメリカ、日本以外の)外国の工作員による工作」についてのアメリカの最新歴史研究が紹介されています。

 「はじめに―」で解説されていますが、『日本は誰と戦ったのか』や『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』などで江崎先生が述べる歴史研究とは、国際関係を前提に歴史を見るというインターナショナル・ヒストリーに終始するのではなく、外国の工作員がもたらした影響を前提に考えるインテリジェンス・ヒストリーです。

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江崎道朗著『日本は誰と戦ったのか』(ワニブックスPLUS新書)発売中

 『日本は誰と戦ったのか』は、日本を舞台にしていないにも関わらず、日本が知らないところで日米開戦への道が開かれていくという、「日本だけが悪かったのではない」という一つの側面を提示します。しかし、同時に、日本も外国でこのような工作が行われていたという情報や「戦い方」を知っていたにも関わらず、日米開戦後にはこうしたことが軽視されていってしまったという点で「日本は悪くなかった」ということもできないのではないかと示してもいます。

 また、こうした外国の工作員による工作についての研究なしに、世界の近現代史を考えることは難しいことが、ヤルタ会談の舞台裏を読み解いた『スターリンの秘密工作員』などの紹介からも見ることができます。

 

 山内さんは、この『日本は誰と戦ったのか』で、ジョン・コスターの『雪作戦』(1996年)やスタントン・エヴァンズらの『スターリンの秘密工作員』(2012年)ほか、多くの未邦訳の海外の文献や資料の翻訳を担当されました。こうした翻訳は、的確な語学能力のみならず、歴史背景やイデオロギーの対立などの理解がなければ難しい点があります。巻末の参考文献リストを見れば、山内さんがどれだけの海外資料と向き合い、理解を深められたがお分かりになるのではないかと思います。

 

 今回は、VENONA文書に加えて、米連邦議会上院国内治安小委員会報告書の内容にも踏み込み、1925年に設立された民間の学術団体「太平洋問題調査会(IRP)」がコミンテルンによってどのように反日活動に利用されていったのかを発表していただきます。

 現代版IRPである「インド太平洋研究会」にとって、このようなインテリジェンス・ヒストリーを知ることはとても有意義なことであり、聴講される皆様にとっては、江崎先生によって日の目を見ることになったインテリジェンス・ヒストリー研究を体験する機会となることでしょう。