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バヌアツサイクロン被害支援<オンライン・バヌアツ講座>6

信じられないことだが、このオンライン・バヌアツ講座をイギリスとフランスのインテリジェンスが読んでいて昨日連絡をもらったのである。

イギリスのインテリジェンス ー 楽しみに読んでるんよ。バヌアツ行きがコロナで保留中なんだ。バヌアツのパスポート販売はひどいな。(今までにバヌアツ政府は約4千冊を主に中国人に売っている。政府予算の半分近くを占めている。問題は審査が甘く国際手配の犯罪者にも簡単に発行してしまうことだ。)トランプ政権になってアメリカがかなり圧力をかけて止めさせたようだね。

私 ー それはない、と思う。その米国の担当者は何も知らないか、あなたがガセネタを摑まされている。パスポート販売は今唯一のバヌアツ政府の収入源。「債務の罠」ならぬ「収入の罠」と呼ばれています。「主権」という独立を手にして得た財産です。これを売るしか国家が継続できないのです。それに太平洋島嶼国、米国や豪州に何か言われて大人しく聞くわけがない。アイランダーそんなにヤワではありませんよ。太平洋島嶼国を理解するにはまだ道は遠いですね。。

 

フランスのインテリジェンス ー とにかく本土のフランス人たちは政治家から官僚まで、太平洋島嶼国は楽園で人々は笑顔で幸せに暮らしているというイメージなの。私もあなたのブログで大分わかって来たわ。

私 ー 200年前、世界一周の航海をしたフランス人航海者、ブーガンビル提督が持ち帰った太平洋島嶼のイメージ「楽園の島」は残念ながら今も影響しているんですね。「人食い」が少なくとも100年前までは日常的に行われて。。その事が書かれている有名なスイス人民族学者の本がオンラインで読めますよ。太平洋島嶼国を専門に学んでいないとこの手の学術書は見る機会はないけど。

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バヌアツ、マレクラ島の人食いと紹介された写真。スイス人民族学者Felix Speiserの本より。”Two Years with the Natives in the Western Pacific” 1913年。Project Gutenberg EBookで読める。

さて、もしかして米国政府が奥の手を使ってパスポート販売を止めさせたのだろうか?と早速検索したところその様子はやはりない。4月10日に出たThe Diplomatの記事にバヌアツは廃止を検討している事が書かれている。

廃止の検討は以前からあった。それはそうだ。自分たちの主権を売って、その市民権を得た人々はバヌアツに住むわけでなくは主にヨーロッパ等に移住し、そこで何をしているのか一切わからない。さすがに国民からは非難轟々。

それに政府が直接パスポートを発行するのではなくエージェントをいくつも設立し、そこが発行するのである。審査基準が緩く、時間もかからない。しかも世界初のクリプとカレンシーで購入できるパスポートとしても話題になっている。お金の流れが霧に包まれているのだ。

そもそも、この市民権・パスポート販売(タックスヘイブンやインフラ工事も)ビジネスを巡って国会議員14名が汚職で有罪となり牢屋に入れられた過去がある。香港かシンガポールの開発会社が攻勢をかけていた。2014年頃だ。ところが2015年にバヌアツを襲った大型サイクロンで状況は一転する。もともと財政が厳しいバヌアツ政府。一度廃止した市民権・パスポート販売に手をつけたのである。

なぜ誰も助けなかったのか?2015年まだ中国の脅威は今のように認識されていなかった。

今回の大型サイクロンで再び財政は厳しくなるはずだ。パスポート販売の廃止を今選択する余地はないのではないか、と記事にあるが、私はさらに中国との怪しい関係は強化されるような気がする。

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2015年10月首相を含む14名の議員が有罪に。。

 

The Diplomatでは今度はソロモン諸島でパスポート販売が開始する事が検討される事が。ソロモン諸島は昨年の9月、長年台湾との外交関係にあったが突然中国に鞍替えして世界の注目を浴びたのだ。

thediplomat.com