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9条より怖い25条(2)

海上保安庁法25条成立経緯の資料をSNSで聞いたら以下の資料を教えていただきました。気になった箇所を抜き出して青で私のコメントを入れました。ご意見歓迎。

 

海上保安庁創設に至る背景と海上保安庁法第 25 条の意義」
廣瀬 肇 海上保安大学校名誉教授、広島文化学 大学社会情報学部教授

海上保安フォーラム「海上の安全を担う海上保安庁への期待」、公益財団法人 海上保安協会 平成29年11月  

https://jcga.or.jp/project/pdf/Forum2017_11.pdf

https://jcga.or.jp/project/pdf/Forum_shiryo2017_11.pdf

 
「25 条を削除せよとか、海上保安庁をもっと軍事的に強化するべきだといった考え方に対して、それはお許しをいただき たいということをお話しするつもり」
とここはまず結論ありきの議論で学術性というか中立性が期待できないような気がする。海保利権優先か?
 
海上保安庁法制定当時の内部文書(海運局総務課、海上保安庁法案逐条説明書)では、 この規定は海上保安庁の軍隊化防止に関する規定であるとし、ポツダム宣言の中に、日本を戦争に導いた軍国主義的権力及び勢力を永久に除去すべきこと及び日本の軍隊は完全に武装を解除せらるべきことの二項目を宣言し、この精神に従って新憲法(21 年 11 月 3 日) に第 9 条が定められた。海上保安庁と雖も憲法 9 条の規定に拘束されることは勿論であっ て、第 25 条(最終案前は 26 条)の規定は、いわば蛇足の規定であるが、憲法第 9 条 2 項に 規定する潜在的戦力たり得る可能性が最も強いので念のためかかる規定が設けられたもの であると説明しています。
平和主義を象徴する我が憲法第 9 条を前提として、海上保安庁法第 25 条が設けられたことは、誕生した、海上保安庁という組織の性格を明確に根拠付けるものであったと言える のでございます。」
9条との関係を議論したこの箇所は重要で、廣瀬氏は9条、しかも戦後すぐの解釈に基づいた9条支持の立場で、現在の安全保障の動きと反対の立場ということではないか?
 
海上保安機関を設置する案が、対日理事会に諮られる前に、GHQ内部の公安局の承認は 得たものの、民生局はこれに反対します。

民生局は、この案では、海軍の中核部隊をおそらく形成すると思われる、一つの組織的 な、よく訓練を受けた、制服着用の軍隊が、その規模についての制限もなく設置されるこ と、速力や武装についての制限がなく、排水量 1500 トンまでの船艇の使用と、その船艇を 領海外の公海上で活動させることを承認しているので反対・・・」

太田論文では25条を入れたのはソ連のデレビヤンコ中将となっているが、ここでは民生局、となっている。ソ連、中国も反対意見を述べている。

 
海上保安庁の船艇等の現場の幹部は、組織発足の折、そのほとんどが高等商船出身者で占められていたことも、軍事的色彩を否定する内在的要因になったであろうと考えられます。」
廣瀬氏が内在的要因といするこの箇所は私の現場での経験上かなり大きいような気がする。商船と海軍の溝は深い。
 
「韓国側は、国際法を無視した、無茶な、海上保安庁の巡視船への無法な銃撃、 巡視船の臨検、巡視船の拿捕といった度重なる異常な行為に対しても、「忍」の一字で耐えに耐え、我慢しつつ、やり返すといったことは一切せず、李ライン警備では、相手を刺激 しないためと、3 インチ砲などの武器の砲身を外しての哨戒活動をしたのでありました。」
日本の漁師が何百人も拉致され殺されていて耐えたらいけなかったのではないだろうか?
 
国際法では比例原則のことを proportionality と言うようですが、忍耐を含む警察権行使の基本である比例原則が適用され、また、巡視船艇及びその運用技術の移転は、軍事的援助とは見做されないことから、我が国においても、マレーシアやフィリピン等への船艇 や技術の供与を行っており、これが、国内で問題にされたことはなかったと承知しており ます。」
日本の海保支援、海外では問題にされている事を無視している。これは次のCéline Pajon女史の論文をこれから読む予定。
“Japan’s Coast Guard and Maritime Self Defense Forces in the East China Sea. Can a black and white system adapt to a gray zone strategy?”, Asia Policy, n°23, January 2017
 
「本質的に、両組織が 代替可能であり、或いは一つの組織となって機能するということは、21 世紀の現代におい ては難しいと言わざるを得ません。」
米国は沿岸警備隊が海軍の補完機能として動いている事実を知らないのだろうか?