インド太平洋研究会 Indo-Pacific Studies

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9条より怖い25条(3)

国際法における海上での法執行活動の意味とその射程」鶴田 順 明治学院大学法学部准教授 https://jcga.or.jp/project/pdf/Forum2017_11.pdf
 
読み飛ばすつもりが鶴田先生の発表はある意味前の廣瀬名誉教授の講演をぶった切る内容にも取れる非常に興味深い、国際法の視点から議論した、読むべき議論である。青が当方のコメント。
 
最初から興味深い鶴田先生の問題意識だ。
「私が気になっているのは次のような理解です。ある事案・事態対処で「軍」が対応の主体となると国家間紛争という構図となり、事案・事態がますます悪化し、国対国の戦争になってしまう可能性がある。それゆえ、それとは異なる事案・事態対処の必要があり、まずは軍ではない「海上法執行機関」が「海上法執行活動」によって対応すべきである、というような理解です。とりわけ最近は海上保安庁に対して外部の方々からさまざまな期待が寄せられていますので、それとの関係で、そのような理解が示されることが多いように思います。大事なのは、このような海上保安庁の外部の方々の理解や具体的な動きを、海上保安庁の内部でどのように受け止めるか、ということだと思います。」
 
答えがすぐでる。海保・自衛隊という枠組ではなく具体的に何をしているか?である。その点で日本の海保はパラミリ、見ようによっては途上国、先進国でも小国の海軍より全然軍事的機能を持っているとの解釈もされる可能性があるであろう。ここら辺はボワっとした記憶しかないので、資料を探したい。
「私も海上保安大学校在職中に、軍か警察か、海軍か海上法執行機関かというような枠組 みで調査・検討をしたことがあります。しかし、いまはそのような枠組みはとりません。 その理由は二つです。まず、軍か警察か、海軍か海上法執行機関かという主体の国内法上 の「位置付け」には着目しません。いかなる点に着目するかというと、各主体の「活動」 です。」
 
鶴田博士は「2007 年のガイアナスリナム事件(CGX 事件)に関する仲裁裁判所の判決」を参照し、法執行と軍事のグレイゾーンを議論している。南米のスリナム海軍による警告が武力行使との判決が下った。多くの国は海軍が法執行を行っているのである。また日本は海保だから武力の行使にはならない、という考えも単純すぎる、ということであろう。
海上での法執行活動における実力の行使は、国連海洋法条約 301 条や国連憲章 2 条 4 項が 禁止する武力の行使や武力による威嚇とは異なります。国連海洋法条約は武力による威嚇 または武力の行使を禁止しつつ、締約国が、領海、排他的経済水域、大陸棚と公海の各海 域に対応した事項に関する執行管轄権を行使することを許容しているため、海上での法執 行活動と軍事活動を区別していますが、両者の境界は明確とは言えません。」