【2月27日18:30より、市ヶ谷アルカディア赤城の間にて、パラオから来日した、法務省事務次官を長く勤め、現在は同省人身売買取締局長のジェニファー・アンソン氏の講演会が開催されましたので、以下にその講演骨子を記載致します。】
<ジェニファー・アンソン氏の講演>
1.パラオの概要&政治体制
・人口は約20,000人、16の州からなり、第一次大戦から第二次大戦の間は日本の統治下にあり、その間にインフラの整備や自動車の普及等が行われ、パラオの人々は日本人をお兄さんの様に思っており、おかげで勤勉且つ健康な生活習慣を身に付けることが出来た。
・しかし第二次大戦以降は米国の委任統治下になり、人々の生活習慣も西欧化され、肥満や成人病が問題になっている
・政治体制は三権分立の民主主義体制をとり、立法府としては米国同様、上院下院の二院制をとり、それぞれ13人、16人の議員からなる。
・全国が16の独立した州に分割され、それぞれの州から16人の下院議員が選ばれるのだが、それとは別に、各州は独自の議会と議員を擁する為に、時たま国と州の間で揉めることがある。従って昨今、州議会廃止の意見も出てきている。
・人口が少ないにもかかわらず、労働力としてフィリッピン人やバングラデシュ人が入ってきている。フィリッピン人は約4000人で主に家事手伝いやレジ係、建設・電気工事関係に、バングラデシュ人は約1000人で農業や自営業につく者が多い。
2.パラオの抱える社会問題
・外国人労働者はパラオに来るに当たって、私財を売り払って約$6000のお金を払って入国してきているが、騙されて農作業の下働き等に使われる。それでも本国にいるよりは楽な生活と見えて、パスポートを破棄してまで、パラオに居続けるのが殆どのケース。
・また中国人女性がホテルやレストランで働けると言われ、同じように騙されて、マッサージパーラーで働かされ、非合法ではあるが、売春を強要される実態がある。直近では、二人の中国人女性がマッサージパーラーの店主を訴え、店主が収監されるということも起こっている。
・売春と同様、ギャンブルも非合法だが、大勢の中国人が観光ビザで入り込み、ギャンブルを行っている。今年に入って中国人の大量逮捕が行われた。
・中国、フィリッピンで作られる麻薬がパラオに持ち込まれ、特に子供がそれの犠牲になっている。米国に協力依頼して取り締まりの共同作戦を進めているが、スムーズには行っていない。
・米国が作成している人身売買への国家レベル基準は三レベルだが、パラオは現在レベル2であり、来年中にレベル1に改善したいと思っている
3.パラオでの柔道の普及
・柔道はパラオでは新しいスポーツであり、大変人気があるが、元々青年協力隊が警察に指導したもの。アンソン氏もそこで柔道を知り、始めた。2009年からは子供達や希望する大人に、アンソン氏自身が柔道を教えている。
・柔道の教育的効果は絶大で、子供達は礼儀正しくなり、何よりも麻薬や人身売買の危険から彼等を守ることに効用が認められ、大人たちからも喜ばれている
・天皇陛下がいらっしゃった時には、柔道着や畳を寄贈して頂き有難かった。又昨年は河野大臣がいらっしゃり、日本外務大臣賞を受賞した。
・現在パラオから高崎経済大学に留学している学生が、柔道での東京オリンピック出場を目指して頑張っているので、応援している
澤間譲治