インド太平洋研究会 Indo-Pacific Studies

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薗浦健太郎議員のインド太平洋構想(3)

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2019年4月22~26日 ブルネイ東ティモール訪問 写真は東ティモール(薗浦議員のFBから)

私は安全保障を担当する総理補佐官として,日本の自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のビジョンを推進するために諸外国を回っている。その一環として,本日と明日,インド太平洋の要衝に位置し,日本にとって重要なパートナーである東ティモールを訪問する。

 まず,東ティモール住民投票20周年に祝意を表するとともに,東ティモールが紛争を乗り越え,民主国家としての平和的発展を遂げたことに敬意を表する。日本は,住民投票の同年末に第1回東ティモール支援国会合を東京で開催したのを皮切りに,ODAPKO,人材育成・能力構築支援等を通じて一貫して東ティモールの国造りを支援してきた。過去半年には,両国外相による相互訪問等を通じて,両国間で様々な分野で協力案件が進み,二国間関係はこれまでにないほど緊密化していることは喜ばしい。今後は,FOIPのビジョンも念頭に,両国の協力・連携の舞台を,地域や国際場裡に広げていきたい。

 FOIPのビジョンは,法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し,インド太平洋をいずれの国にも安定と繁栄をもたらす「国際公共財」とするために進めている。このビジョンを共有するいかなる国とも協力できるという,開かれた,包摂的なもの。具体的には,①法の支配,航行の自由,自由貿易等の基本原則の普及・定着,②質の高いインフラ整備を通じた連結性向上による経済的繁栄の追求,③海上法執行能力の向上支援や防災,海賊対策等の平和と安定の確保に向けた取組を進めていく。

 ①基本原則の普及・定着に関して,これまで日本は,国内省庁横断的な取組やUNDPとの連携の下,東ティモールの警察や司法等の法執行当局に対する人材育成等を実施してきた。②連結性強化に向けては,昨年開通したディリの「日の出橋」(第2コモロ橋)に続き,ディリ港フェリーターミナル改修計画については今年末までに完工する予定。また,ディリ国際空港整備については,計画支援の実施に向けて,政府間での最終的な調整を進めている。③平和と安定の確保に向けた取組については,2016年及び2017年に東ティモール海上保安当局に対する違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策に係る研修を実施したほか,2010年以降,防衛大学校にて毎年,累計23名の東ティモール国軍軍人を留学生として受け入れている。また,新たな取組として,昨年,日・東ティモールインドネシア三カ国協力の枠組みが始動し,今後,海洋分野等での協力の具体化に向けて検討を進めていく。上記は全てFOIPのビジョンの実現に資するもの。

これらの取組の成果を基礎に,今後は,両国間の地域における連携を強化していきたい。特に,東ティモールは,国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく調停手続きにより解決に至った最初の事例として,豪州との間で海洋境界画定に合意したが,今後,東ティモールは,その経験を生かして,インド太平洋地域における法の支配の確立において役割を果たしていくことが期待される。東ティモールの法の支配を重視する姿勢は,FOIPのビジョンと軌を一にするものであり,日本としてもシナジーを生む協力・連携を行っていきたい。

また,東ティモールは地域への貢献に向けてASEAN加盟を目指していると承知する。東ティモールASEAN加盟は,今後の両国の地域における連携の潜在性・可能性を拡大するものであり,日本として支持し,必要な協力を惜しまない。

結びに,インド太平洋地域が,北朝鮮南シナ海といった重要な地域的課題に直面し,また,海賊,テロ,大量破壊兵器の拡散,自然災害,違法操業などの様々な脅威に晒されている中,今後,両国は二国間及び地域においてどのような協力・連携が可能であろうか。この度の訪問に際して,東ティモールの政府高官との間で,そのことについてじっくり議論したい。