インド太平洋研究会 Indo-Pacific Studies

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第1回オフライン研究会補足2 文献と史料

第一回オフライン研究会で、参考文献についてのご質問をいただきました。また、研究会のあと、「勉強会で訳しながら読みたいと思うが、未邦訳文献にどのようなものがあるか」というご質問もありました。

 

 まず、発表の参考文献と参考史料ですが、主なものは以下の通りです。

 

マッカラン報告書 (Institute of Pacific Relations Report of the Committee on the Judiciary Eighty-Second Congress Second Session Pursuant to S. Res. 366 (81st session) A Resolution Relating to the Internal Security of the United States) これはIPRについての上院司法委員会国内治安小委員会の聴聞会の記録をまとめたものですが、部分的に聴聞会の記録本体の方も参照しました。

 

マッカラン報告書や聴聞会記録は、HathiTrustのサイトで、 Institute of Pacific Relations Report とか、Institute of Pacific Relations Hearings で検索すれば出てきます。HathiTrustは全米の大学図書館を横断検索し、デジタル化された資料を自宅のパソコンで閲覧できるので、非常に便利です。

https://www.hathitrust.org/

 

書籍:

John Earl Haynes & Harvey Klehr, Venona: Decoding Soviet Espionage in America, kindle version, Yale University Press, 1999.

 

John Earl Haynes, Red Scare or Red Manace?:  American Communism and Anticommunism in the Cold War Era, kindle version, Ivan R Dee, 1995.

 

一次史料:

ヴァシリエフ・ノート

https://digitalarchive.wilsoncenter.org/collection/86/vassiliev-notebooks

 

ヴェノナ文書

https://www.nsa.gov/news-features/declassified-documents/venona/

 

オフライン研究会のハンドアウトで、マッカラン委員会が「工作員の可能性がある」とした人々のリストを挙げ、そのうちでヴェノナ文書によって工作員だと確定した人、ヴェノナ文書以外の史料で工作員だと確定した人に印をつけてありますが、これはヘインズ&クレアの原書巻末の付録、ウィルソン・センターのヴァシリエフ・ノートのサイト、および連邦政府のヴェノナ文書のサイトに基づいています。

 

インテリジェンス・ヒストリーの重要な文献で未邦訳のものは山のようにあります。インテリジェンス関係の公開された史料に関連したものに絞って、しかもそのほんの一部だけですがご紹介しますと、

 

まずヴェノナ文書については、解読された通信の翻訳文を上記のサイトで読むことができます。

 

ヴェノナ文書について書かれた本は、PHPが邦訳・刊行したジョン・R・ヘインズ&ハーヴェイ・クレアの『ヴェノナ』のほかに、たとえば以下のようなものがあります(出版年はわかる限り初版年を挙げました。以下同じ)。

 

Robert Louis Benson & Michael Warner (eds.), Venona: The Soviet Espionage and the American Response, NSA—Central Intelligence Agency, 1996.

ヴェノナ文書そのものの集大成の本です。編者はNSAとCIAのスタッフです。

 

Nigel West, Venona: The Greatest Secret of the Cold War, Harper Collins, 1999.

ヘインズ&クレアの『ヴェノナ』と比べて、GCHQアメリカのNSAに対するイギリス側のカウンターパート)やMI5など、イギリス側の話も入っているところが特徴です。著者のナイジェル・ウェストは安全保障やインテリジェンスに詳しく、その分野の本を多数書いています。

 

Herbert Romerstein & Eric Breindel, The Venona Secrets: The Definitive Exposé of Soviet Espionage in America, Regnery Pub, 2000.

ヴェノナ文書が明らかにした、アメリカに対するソ連の工作を描いています。ロマースタインは元共産主義者で、転向後は連邦議会スタッフとして安全保障やインテリジェンスに関する調査を行っていました。

 

ヴァシリエフ・ノートについては以下のようなものがあります。

 

Allen Weinstein & Alexander Vassiliev, The Haunted Wood: Soviet Espionage in America—The Stalin Era, Random House, 1998.

 

John Earl Haynes, Harvey Klehr & Alexander Vassiliev, Spies: The Rise and Fall of the KGB in America, Yale University Press, 2009.

 

ミトロヒン文書というのもあります。KGBの元アーキヴィスト、ヴァシーリー・ミトロヒンが大量のKGBの機密文書をイギリスに持ち込んだものです。これは違うタイトル、違う出版社で全く同じ内容のものが出ています。最初、私はそれを知らずに両方買ってしまいましたが、中身は寸分違わず同じものでした。

 

英国版がこちら:

Christopher Andrew & Vasili Mitrokhin, The Mitrokhin Archive: The KGB in Europe and the West, Allen Lane, 1999.

Christopher Andrew & Vasili Mitrokhin, The Mitrokhin Archive II: The KGB and the World, Allen Lane, 2005.

 

米国版がこちら:

Christopher Andrew & Vasili Mitrokhin, The Sword and the Shield: The Mitrokhin Archive and the Secret History of the KGB, Basic Books, 1999.

Christopher Andrew & Vasili Mitrokhin, The World Was Going Our Way: The KGB and the Battle for the Third World:  Newly Revealed Secrets from the Mitrokhin Archive, Basic Books, 2006.

 

どちらも、一冊目がアメリカとヨーロッパ、二冊目がそれ以外の地域というふうになっています。日本のことは二冊目に出てきます。

 

 ミトロヒン文書に関するこれらの本の邦訳は出ていませんが、軍事やインテリジェンスに詳しいジャーナリストの黒井文太郎氏のブログに日本に関係する部分が紹介されています。

http://wldintel.blog60.fc2.com/blog-entry-41.html